「ベイツ・モーテル」は、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画『サイコ』の“プリクエル(前日譚)”であると同時に、“リイマジニング”作品でもある。オリジナルの作品をもう一度作り直すリメイクやリブート(再起動)に対し、リイマジニングはオリジナルと同じ設定やテーマを持ちながら、新たな物語として描かれるのが特長。実はこの“リイマジニング”、いま海外ドラマ・映画でブームになっている手法なのだ。
海外ドラマでは、『羊たちの沈黙』のレクターが精神科医として潜伏していた期間を描いた「HANNIBAL/ハンニバル」、『バットマン』『ダークナイト』の前日譚でゴードン刑事を主人公にした「GOTHAM/ゴッサム」、コーエン兄弟監督作『ファーゴ』の世界観を引き継ぎながら別の事件を描く「ファーゴ」、テリー・ギリアム監督作『12モンキーズ』の未来から過去へとやって来た男を描く設定は残しながら、異なる物語が展開する「12モンキーズ」と、リマイジニングの名作が数々誕生している。
映画でも、『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』の後日談的な物語を描いた『アリス・イン・ワンダーランド』、『眠れる森の美女』を悪役の視点で描いた『マレフィセント』など、リイマジニング戦略を取ったディズニー映画は次々とヒット作を連発。今後も『美女と野獣』『ティンカー・ベル』『ムーラン』『リトル・マーメイド』などが続くと見られている。
時代を現代に移して『サイコ』の猟奇殺人鬼ノーマン・ベイツの若き日を描く「ベイツ・モーテル」。『サイコ』ファンにとっては伏線や目配せがうれしく、元ネタを知らない人にとっては現代の物語として新鮮に楽しめる。「ベイツ・モーテル」は、“リイマジニング”効果によって、観る者を選ばないドラマになっているのだ。